禁句【紫京院瑞姫】
私のSNSのフォロワーには未だ、大学周辺、またはそれ以前の友人が多くいる。「フェミニズム」という言葉を出す時、それを思い出して、この期に及んで指が止まってしまうことが時々ある。あいつがフェミニスト?急にかぶれたの?キャラを変えたの?と笑われる、そう思う時があるから。
学生の時、男の子に「瑞姫ちゃんはフェミニストに嫌われていそう」と言われたことがある。確かに私は当時フェミニンな服装を好んで着ていた。嫌われようとするつもりは毛頭ないけれど、そういうものなのかな、と思って聞いていた。するとちょうどその時隣にいた女友達が、「私はフェミニストだよ」と言った。その男が去ってから、「みーじゃになんて失礼なことを言うんだ」そして「もしその人が女らしい服装をしていても、その人がフェミニストであることとは矛盾しない」そう言った。
私はその頃、自分をフェミニストだと思っていなかった。なんなら、フェミニストは仮想敵と仮想世界で戦うTwitterの人だと思っていたし、私をフェミニストに嫌われてる呼ばわりした男にもそう言った。Twitterで見る「フェミニスト」のことをあまり好いていなかったのだ。だから、現実にいる女友達が、「私はフェミニスト」と声に出して言ったことはすごいことだと思ったしびっくりした。私にとってはそれ即ち、男という人類の半分を敵に回すということで、私には到底出来ないことだった。
そして最も重要な点として、インターネットの人間がフェミニストの全てではない、ということを知った。私が、女らしい格好をして、水商売に男遊びで授業にも行かず、正直サークラと呼ばれても文句ない人間だったこととは関係なしに、私を友達だと言ってくれるフェミニストが、現実にいたのだ。
また同じように、あの時言われた「フェミニストに嫌われていそう」な私の一部は、私の全てではない。
そうある以前に1人の人間で、それ以外にもたくさんの要素が重なり合って、私という個人が存在している。
お客様から、「私は綺麗でいようとすることをやめれないし/彼氏がいる/推しがいる のに、フェミニストとして闘っていいのかな」という声を聞くことがある。
でも、私は娑婆の職場で接客していて思うのだけれど、フェミニンな服を着ている人も、彼氏がいる人も、結婚している人も、子供がいる人も、フェミニズム的、なんならミサンドリー的な考えを持っていることは往々にしてある。誰だって、我々トレメンドスと同じように、男への不満を抱えている。これは魔王の言葉だが、つまり、「女はみんな真実に気がついている」のだ。
逆に、フェミニストの中にも、推してる男がいる人もいるし(私もなんだかんだそうだし)、たまにはロマンチックラブイデオロギーな映画を観たり、歌を聴いたり、少女漫画が好きな人もいる。
きっと、「フェミ」への偏見とか、フェミニストはかくあるべし、みたいな理想像とかが強くあってフェミニストはいつだって完璧を求められるから、自分をフェミニストと言っていいのかな、と思ったり、自分を名誉男性みたいに思っちゃったりする女が多いんじゃないか。
実際、2019年に行われたBBCによる英米の世論調査によると、自分をフェミニストだと自認する女は5人に1人に満たなかった。それとは裏腹に、10人中8人が、性差別は問題であり、女と男はあらゆる点で平等に扱われるべきだと回答している。確かにそれはフェミニズム以前に当たり前のことかもしれない。でも、まずはその当たり前に気がつくところから始まるのがフェミニズムではないか、と思う。
政治やあらゆる論争において、右派と左派、或いは保守とリベラル、に常に二項対立を構築される。それが社会の見方であり、歴史の書き方になっている。
しかしあらゆる問題は、綺麗に二分できるような単純な対立構造ではない。自分の考えを持つということが社会的にスティグマ化され対立を煽られることで、その人の本当の敵を見えなくさせられているのだ。
だが実際、男に、この女はフェミニストで、この女は名誉男性だから、とラベリングして、分かり合えないと思わせて、女同士を分断することなんて、絶対に出来やしない。
例えば、自分をフェミニストだと言える友人と、一見「フェミニストに嫌われていそう」な私が、友人同士なように。
この世には誰1人、矛盾を抱えない人間など存在しない。人間関係も同じで、何か一つの要素だけを見て関係を築いたり切ったりするものでもないし。
FLRに「『女の敵は女』と手首を切る女」という台詞が出てくる。人との関係性を断たれることは身を切られるような思いだと思う。だから、もし、これを読んでいるミリタントの中に、「こんな自分がフェミニストとしてトレメンドスと闘っていいのかな」と思う人がいたら、「絶対いいに決まってる!」と言います。そのままの貴女と、私で関係を築こう。男による分断で奪われた、「シスターフッド、女だけが使える特別な魔法(LittleBlack「シスターフッドの魔法」より)」を取り戻そう
FLR配信のラストラン、繋がりを構築したい誰かに、連絡の口実に、どんどん使っていってね!
時に、私にとって、冒頭に書いた、フェミニズムという言葉を出すのが憚られる時の防壁の正体は、こう。今、私が「私はフェミニスト」と言うことは、過去の私をよく知る人にとって、"女さんの後出しジャンケン"とか思われてしまうんだろうなって思ってしまうから。
自分で選んで当たり屋みたいに男に迎合して、それで後から「男は全員ぶっ殺す!」なんて、私はずるい人間?ウマが良すぎない?そんなふうに思った。フェミニストは清廉潔白で完璧であるべき、という言説によって、自分の中の矛盾に耐えられない、と思わされていたのだ。上述の、共闘に遠慮してしまうミリタントのように、フェミニストを自認していない5人中4人のように、こんな私がフェミニストになれやしないのだと思った。
でも、いつも思うのが、レイプされた女の前で、そして、あの夜の私の前で、そんなこと言える?口が裂けても言えないよ、ということだ。
昨日、円さんに自尊心を獲得する方法を教えてもらった。それは「自分との約束を守ること」だそう。トレメンドスに入るまでは、おれを愛せー!(もしくは、逆に、罰せー!)な時、人に対して当たり屋になることで自尊心みたいなものを保ってきた。私がフェミニストだと声を上げて言うことは、当たり屋の対象たちに別れを告げてもう戻らないということでもある。
でも、もう自分の自尊心は自分で保てるから、その人たちはもういらない。後出しジャンケンとか言われても別にいいし、もう関係ない。だから、私はフェミニストだと、女は男を殺していいと、1番死にそうだったあの時の私と、客席で泣いてるミリタントのために言うよ。
死にそうだったといえば、(なんか人を選ぶのでここからはサポメン限定公開にさせてもらいます)