僕の夏休み【紫京院瑞姫】

読書感想文
TremendousCircus 2024.10.05
誰でも

先々月「復讐幻想」を終えてから、来週の「オクトーバーヒールフェスト」の稽古が始まるまでの期間は、訳あって、人生で今までにないくらい自分と向き合っていた。何冊か本を読んで、良い本もあったしそんなに良くない本もあった。「良い本」とは、読んでいて楽しい本ではなく、耳が痛くなる本、そんなこととっくに知ってたのにこの本で初めて言語化された、と悔しくなる本、一晩で読んで突然世界と繋がるような覚醒作用のある本、のことを指している。この夏、それに最も値する本が、アリス・ミラー『才能ある子のドラマ』だった。

アリス・ミラーとは児童虐待の構造、またそれによって生じる社会規模の悪影響を研究する心理学者だ。この『才能ある子のドラマ』も児童虐待に関する本であり、主に、抑圧され感情や欲求の発露を禁じられた子供のことが書いてある。

そもそもこの本を読んだのは、私が普段から「なんでもいいです」と言いがちだったり、幼少期から好きな自分の「原風景」なるものを羅列できない、だから自分は頭が悪くて文化がないのだと思って困っていたことだったり、実際子供の頃の記憶が少ない方っていうことで円さんが勧めてくれたからだ。

この本によれば、子供は抑圧環境の中でいつわりの自己を作り上げる。それは「模範囚」である。模範囚であることは人間関係、家庭内においては親、との関係のやむを得ない対価であり、模範囚であれるかどうか、常に自分を見張り、模範囚でなくなることに常に恐怖を感じている。模範囚でない自分は、空虚で無意味である、という幻想に取り憑かれている。そこで損なわれる感情や欲求の発露、こうありたい、あれがしたいと願うこと、つまり内面のささやきに耳を貸さないことで、自動で無意識で服従する習慣が身につき、それは自分の恒久的な人格であると、大人になっても、親元を離れても、強迫的に服従を繰り返す。

内面のささやきに耳を貸さなければ、自分は他者とは違う別個の存在であり、自分は自分であるという感覚が育たない。その感覚は、自分のものの見方を形づくり、表現する力になる。この夏休み育てようとしていたのがこの力だった。私の子供の頃、覚えていることや覚えていないことがあるのはなんでなのか、覚えていたのに蓋をしていたこと、それによって強迫的に感じる罪の意識の蓋を開けること。

私のことは私しか語れない、そうでなければならない、それを『才能ある子のドラマ』で得た上記の構造で知り、自分と、というか解離人格と向き合っていた次第でございました。

トレメンドスの本を読んで、演じて、フェミニズムにも虐待にもそれなりに知見があると思っていたけれど、自分の目で第一文献にあたると、私もただの人であり、自分の弱さと限界を知ることになる。

本番の華々しい拍手の後、汚部屋で風呂キャンの自分とのギャップで凹んでたけど、それも華々しさという竹馬に乗らない自分はゴミに違いないという強迫観念から来ていたのだ。

今回は久々のレター更新だけど、前回や前々回、少し前までのレターを見ると私には世界全てが敵に見えていて、女も男も、誰彼構わず警戒、攻撃しなければならないと思っていたし実際そうして生きていた。

ただ、この本を読んで、そして解離人格と向き合うことで、世界がフラットに見えて、全世界が私を貶め罪を裁き罰する存在であるというのは強迫的な妄想だとわかって、しらふにもどったような感覚でした。

「アリス・ミラーを読んだだけの一般人」にならないよう頑張ります。

来週は久しぶりの現場、みんなも近況について教えてね。

en&葉山翔太 歌謡ショー

"オクトーバーヒールフェスト"

公演日時/2024年10月12日(土)

会場/ライブハウス「新宿 グラムシュタイン」

http://pladox.com

主催/TremendousCircus

公演HP/ http://tremendous.jp/10heelfest/

チケット/一般(前売り・当日共通)  4,000円+ワンドリンク(600円)

開場/17:30

開演/18:00

公演時間は途中休憩を挟みまして140分を予定しています。

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