世界の半分に死ねと言われても【紫京院】

蜂の巣ピアスは深い穴/かごめかごめカミソリ敬礼
TremendousCircus 2024.10.18
誰でも

久しぶりに筆を取りました。

セクシャルウェルネスの仕事をしていると健康について考え、語ることが多い。

だって「ウェルネス」とは健康のことだから。

そして、セクシャルウェルネスとは、性の健康にとどまらず、生きる上での健康に繋がる。

例えば、「子宮脱」。

これは一般医療よりも、「セクシャルウェルネス」の文脈で予防が語られる症状だ。具体的には、骨盤底筋群の筋力が衰えることにより、腟から子宮が出てきてしまう症状のこと。これは今のところ、治療法は「出てきたら押し戻す」一択しかない。

だから、子宮脱になってしまったら、まず、子宮が出てきてほしくないから、トイレに行かなくなる。(排泄時に子宮が出てきてしまうから)トイレに行かないように、飲まない、食べなくなって、栄養が足りなくて寝たきりに……なんて女性もいる。

命に関わるのに、治療法が「出てきたら押し戻す」って、女は人形じゃないんだよって話。

医者は何をしているのか?フェムテックの業界がここ数年で大きくなっているのも医者の怠慢に起因しているし、健康になりたいという女の気持ちが金になると男が踏んだからである。

最近、弊社Xに、フェムケアは女を医療から遠ざけ女を騙しグッズ押し売るパチ屋郎という旨の馬鹿たれリプライが飛んできたので、こんなことを書きました。

そんなこんなで、職業柄、また、私の身体性から、トレメンドスの短編演目「LittleBlack」の中の大曲、「7つの権力」のこの歌詞について、考える機会が多い。

"ああ神様、てめえは、存在もしねーくせに、なぜ、女を憎むのか、女の肉体を、男より弱く作ったのか____"

事務所でうさぎを眺めていると、男の子うさぎが女の子うさぎを追いかけている。女の子うさぎは、追いかけられると逃げていく。

私は何にでも答えがほしくて考えてしまうタイプなので、こんな風に考える。

セックスが生命体の本能ならば、なぜ逃げることがある?現に、逃げてるということは本能なんていうのは嘘で(少なくとも、雌においては)、恐怖体験そのものなんじゃないの?それなのにどうして生命は生まれ続けるの?なぜそのことについて誰も議論しないのか、不思議だった。地球上の半分の命が恐怖に屈して、増え続ける命。

そんな不条理な世界観を誰も不条理と思わない、思ってる人と出会ったことがない。上記、7つの権力のその歌詞だけが、私の「なぜ?」を歌っている。

仕事で、パートナーとのインターコースが楽しくない、という話を聞く機会が少なくない。上記の「インターコース拒絶は女の本能説」を参照するとあたりめーだし、じゃあすんなよって言いそうになるんだけど、パートナーとの関係性に真剣に悩んでる人の前でそう言う訳にもいかない。だからこそ、女が考えたプレジャートイがたくさんある。それを使った感動を、泣きそうになりながら、私本当に一生性を楽しめないんだと思ってた、と伝えてくれるお客様もたくさんいる。

女男間のオーガズムギャップも、「ああ神様、てめーは存在もしねーくせになぜ!」案件なのだ。女の身体は、男が吸い取り、得をする構造に作られている。挿入が痛くて、怖くて、でもパートナーに嫌われたくなくて、そんな女の子を毎日毎日、数え切れないほど見てきた。その中の誰にも、「パートナーとインターコースしたくて」と心から思ってる女はいなかった。そんな風に相談されたことほとんどない。みんな、みんな、痛くなくしたい、慣れたい、嫌われたくない、マイナスをゼロにするという理由であり、決して積極的同意なんかじゃない。

性売買していた時と正反対だ。インターコースしたくてたまらない男を毎日毎日数え切れないほど見てきた時の逆。痛くなりたくない、怖くなりたくない、でも嫌われたくない、そんな女たちが、今の私のお客さん。

インターコースは恐怖の根源でありトラウマそのものだという真実に気付いているから怖がるし、でも、怖がるとパートナーとの繋がりが断ち切れるから、怖くなくなりたい。そんなダブルバインドを持ってお店に来るお客さんが本当に多い。

もし私が今、赤に白の水玉のロリィタを着てフルヴィアで居続けるならば、インターコースを拒絶せよ!と言うだろうと何度も思った、あれは私の憧れを演じた姿なので、そう思う。一方、もし私が普通の25歳のヘテロの女性として話すならば、わかるよ、でもすぐ慣れるよ、と言ってしまうだろう。どちらも、お店で言う訳にはいかない。ので、その折衷案として、ダイレーターやバイブレーターやローションを渡す。そんな日々を一年ほど続けております。

動物でさえ追いかけられたら逃げてしまうほど怖いインターコースを、世界人類の半分「男」から突き付けられ、言わば死を迫られるのは、女という「身体」である。(もはや昨今では「性別」という言葉はあまりにも包括的すぎるので「身体」で統一します)

男性支配社会は私たちに、痩せていて、色は白くて、瞳孔は大きいのが美しいのだと押し付け、私たちもその美意識を内面化する。

「美しい」というのは建前で、本音では「死体に似ている」と言うのが正しいだろう。

痩せ細った身体は白骨。

青白い肌の下では血が流れることを止め、

大きなカラコンは死して開いた瞳孔によく似ている。

もっと踏み込むならば、人体改造もその一種だ。

私は8個ピアスが開いている。先日披露した、私に頂いた新曲「水玉行動」にこんな歌詞がある。

"蜂の巣ピアスは深い穴"

これは、私の思う水玉っていうのは、平面に浮き出ているもののみを指しているのではなく、穴のことも指している。と円さんに話したのがきっかけで出来たフレーズだ。

シーラ・ジェフリーズ『美とミソジニー』曰く、ピアッシングもミソジニーの側面を内包して成長したカルチャーの1つである。

歴史的に魔除けの側面から紀元前より行われていた慣習だが、20世紀末頃、フェティッシュファッションとして流行し、それがハードめな癖(ヘキ)を持った人にクリーンヒット、人の体に穴開けてみたい!という店や業者が乱立し今に至る。

「蜂の巣ピアス」の「蜂の巣」って本来、銃でターゲットを撃ってたくさん弾を当てることができた時に出来る蓮コラ状のターゲットのことを指す時に使われると思うんだけど、ここでは自分のピアスのことを指していて。かわいいなって、かわいいピアスたくさんなのに穴が足りないよって、軽く開けがちなのだけど、よく考えたら自分を蜂の巣にする行為で、ストレス発散が自分に向いてやってる側面も大きいよね。と思うのでした。

あとは、フェティシズムに巻き込まれて開けてしまう穴。私が舌にピアスを開けてたのはその時入れ込んでたカス男に言われたからだったし性売買でウケたからだけど、食事や発語にダメージ喰らってまで男の性欲に迎合してたら世話ねえなと思うとファッションとしてかわいく思えないし、塞いでよかった。

ピアスは、血が流れないだけの自己破損行為。まさに、蜂の巣ピアスは深い穴なんです。

これがもっともっとエスカレートして、人体損傷に向かって、整形手術、ラビアプラスティ、四肢切断にまで至るのだと忘れない方がいいですよ!

(と美ミソ読んで怖くなりました)男が定義し我々に命令する美とミソジニーは、女を死体に変えるための暴力を「美しさ」「愛され」でパッケージングし、「ケア」「権利」「自分の身体は自分のもの」のお題目のもと発露されたものなのだから。

1年前ほどレターで「手首を切る女と乳房切除をする女は何も変わらない」という旨を書いたことがあります。今でも、決して変わってないです。

""男性支配社会において、男は女に死んで欲しがってる""という真実に気が付いた女がそれを言語化できずに握るのがカミソリで、死んでもいいから男性支配社会で生きていきたいと願う女がダイエットして化粧して整形して、一方、男になりたいと思う女が行くのが乳房切除で、みんなみんな、自分を肉屋の肉みたいに切り刻むのだ。自分のことを、血が流れないセラミックの人形とでも思っているかのように。

今日、2年前の今より10キロ痩せてる自分の写真を見て、白骨みたいなこの女がこのままでは1gも、食べるとこ全部なくなるまで、骨も残らないような未来が来やしないかと急に怖くなったのだ。実際今生きてるからそんなことはないのだけど。

皮膚の下は女も男も同じ血と肉なのに、わざわざ女だけを選んで調理し、食べ尽くす。人食系のゴア映画は案外フィクションじゃないよってなんとなく感じるのでした。

世界の半分、男から死ねと言われてる女たちへ、そして、自分へ、自分だけは生きろと言いたい。世界全部があなたを生きさせなくても、トレメンドスだけは、生きろと言う人たちだと信じているでしょう?私も同じです。

私も次の公演まで頑張って命濃く生きる、命が濃いラディヴィクフェミ、リブの女でいる、この文章の中の人として肉体をもって、また会えますよう。ご自愛してください。ラブピにも遊びに来てね!

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